事務所ブログ

2013年12月10日 火曜日

法律Q&A【未払い賃金②】

こんにちは。
弁護士の狩野です。
今回の法律Q&Aは、未払い賃金②と題して、未払残業代の問題を取り上げてみます。

Q.私は、都内のIT関係会社に勤務していました。昨年4月、所属する部署内のチームリーダーになったのですが、その頃から業務が激増し、毎日終電近くまで仕事をするようになりました。会社は、21時までの残業しか認めてくれず、それ以降は一切残業代が支払われていません。なお、9時半始業で、お昼休みは1時間、終業は17時半でした。
 最初のうちは、リーダーという立場からも必死に業務をこなしてきましたが、今年10月になってとうとう体を壊してしまい、会社も退職しました。今になってみると、きちんと支払われていない残業代を会社に請求したいです。どのような方法がありますか?退職後でも請求できるのでしょうか?

A.未払い残業代は退職後でも請求できます。
 請求する方法としては、労働審判等の法的手続が考えられます。
 そこで、残業代の請求について以下に簡単にご説明致します。

①割増の対象となる残業について
 会社は、時間外労働に対して割増賃金を支払う義務がありますが、割増賃金の対象となる残業は、法定労働時間(8時間)を超えた労働時間であることに注意が必要です。
 いわゆる「残業」には、会社の定時は超えているけれど、法定労働時間の範囲内である「法(定)内残業」と法定労働時間を超えた「法(定)外残業」の2種類があります。

・法(定)内残業・・・所定労働時間超え、法廷労働時間内⇒通常の賃金
・法(定)外残業・・・法廷労働時間超え⇒割増賃金の対象

②請求できる残業代の範囲
 残業代を含めた未払い賃金は、法律上、2年の消滅時効が定められています。
そのため、請求できる残業代は、遡って2年分となります。
 今回のケースについては、リーダー昇進以降の残業代の全額が請求できますが、昨年4月分の残業代については時効が迫っています。
 時効は日々進行するので、未払残業代を請求すると決めたら、なるべく早く行動を起こす必要があります。

③残業代請求の主な争点や証拠について
 残業代請求の大前提となるのが、労働時間の立証です。
これには、タイムカードやビルの出入館記録といった客観的な証拠があることが望ましいですが、これらが無い場合でも労働者本人の手帳内のメモや日記をもとに立証できる場合があります。
 会社に残っていても実際は仕事をしていなかったとか、残業を命じていないといった主張が会社側からされることもあります。このような主張に対する反論のための証拠として、メモや日記には、作業内容やそれに要した時間も記載しておくといいでしょう。

④労働審判や訴訟による解決
 残業代を請求するための法的手続は、いくつかありますが、最近は、労働審判による解決が増えてきました。労働審判は調停による解決を目指すものなので、金額的な譲歩を覚悟する必要があるというデメリットはありますが、原則3回以内の審理で解決するため、迅速な解決が図れるという大きなメリットがあります。なお、和解であれば、会社も納得していることが多く、確実に支払われる可能性が高いという点もメリットの一つとして挙げられます。
 もちろん、通常の民事訴訟という方法もあります。
訴訟は、時間や費用はかかりますが、勝訴できた場合には、請求額と同額の「付加金」(労働基準法114条)が認められる場合があるというメリットが存在します。
 なお、会社の経営状態が危ない等、急ぐ必要がある場合には、仮差押えの申立を行うこともあります。

 さて、未払残業代に関するご説明は以上です。
必要となる証拠や最適な手続は、事案ごとに異なります。
ご不明なことがございましたら、弊所までどうぞお気軽にお問い合わせください。

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投稿者 ノモス総合法律事務所

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