事務所ブログ

2013年11月21日 木曜日

法律Q&A【未払い賃金①】

こんにちは。
弁護士の狩野です。
最近、労働基準監督官をテーマにしたドラマが人気ですね。
今回の法律Q&Aは、「未払い賃金」の問題を取り上げてみます。

Q:私は、中小のメーカーに勤めるサラリーマンですが、半年位前から給料の支払が滞るようになりました。現在の未払いは、約4か月分になります。従業員の間にも近々倒産するという噂が広がっています。会社が倒産してしまったら、未払いの給料はどうなってしまうのでしょうか。

A:4か月分全額の支払を受けることは難しいかもしれませんが、一部であれば確保できる可能性があります。
 まず、会社の経営が苦しく、毎月の給与の支払が滞っている場合、会社に対して訴訟を起こして勝訴したとしても、実際に支払ってもらえる可能性は低く、訴訟を行っている間に会社が倒産してしまうことも考えられます。
 したがって、この場合、訴訟という選択肢はあまり効果的とは言えません。

 会社が倒産した場合でも、裁判以外の方法で、支払を確保することができます。このための手続として重要なのが、「独立行政法人労働者健康福祉機構」による未払い賃金の立替え払い制度です。この制度を利用することで、退職前6か月分の未払い給与の8割相当額の支払を受けることが可能です。

 制度の適用を受けるためには、法律上の要件を満たす必要がありますが、特に以下の点に注意する必要があります(要件については、機構のHPもご参照下さい。http://www.rofuku.go.jp/tabid/687/Default.aspx)。

①会社が法律上の倒産手続(破産、民事再生、会社更生、特別清算)を申し立てるか、労働基準監督署長による事実上の倒産の認定を受ける必要があります。

②会社の「倒産」の日の6か月前から2年以内に退職した場合のみ、適用の対象となります。 

③立替払の対象になるのは、「毎月の給与(残業代を含みます)」、「退職金」です。「賞与(ボーナス)」や「解雇予告手当」は対象になりません。

④未払い賃金の立証は、主として賃金台帳やタイムカードにより行います。しかし、これらが不備となっている場合もよくあるので、普段から労働時間をメモしておくと良いでしょう。また、作業内容も記録しておくと、残業代の立証の役に立つ場合があります。

 今回は、会社が倒産した場合に、裁判以外の方法で賃金を確保する方法をご紹介しました。裁判外の手続といっても、裁判と同様に「証拠」が重要です。
 会社の倒産は突然訪れることも多いので、普段から「もしも」の時に備えて日々記録を残しておく習慣をつけるとよいと思います。

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投稿者 ノモス総合法律事務所

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